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2013年3月から始動した岩手県大船渡市三陸町吉浜の全優石津波記憶石プロジェクト。2014年3月25日に除幕式の日程が決定し、最終調整のため清水氏は岐阜県多治見市の石玉石材さんへと向かった。
「吉浜での津波記憶石の製作に協力していただいた水野社長を訪ねるため岐阜県多治見市へ向かいました。ご支援に対して電話でのご挨拶ではなく、実際にお会いして感謝の気持ちを示したかったからです。また、石玉石材さんに伺ったのは、髙橋先生のデザイン案から図面を起こしたものがすでに製品となって完成していました。字彫りを石玉石材さんで彫刻していただけるとのことでしたので実際に見に行き彫刻する場所のバランスや文字を彫る深さなどの最終調整をしたかったためです。打ち合わせが終わった後、今の石材業界の話や水野さんが陸前高田市と親交があり、復興に協力したい旨など様々なことを話しているうちに二時間くらいはあっという間に過ぎてしまいました。」
様々な関係各所の調整を行い除幕式の日程が決まった。それにともない自動的に施工完了期日も決まる。字彫りを石玉石材さんで完了した津波記憶石は陸路で吉浜まで送られた。最後の据え付けを担当する岩手県下閉伊郡山田町 伊藤石材工業さんには、日程が厳しい中での工事に大変な努力をしていただいた。
2011年3月11日より3年が経ち、多くの人達の想い、吉浜の2人の村長への顕彰などを込めた津波記憶石が完成した。正面には「吉浜 奇跡の集落」と隷書体で彫られている。左にある石碑には今回の津波のことを忘れずに後世へ遺す碑文が刻まれている。
「吉浜の人々と歴史」を象徴的なかたちに捉え、意図したデザインです。それは、「二人の村長の教え」を支えの台形の石に例え、そしてその上にバランスを保ちながら置かれた二つのL字型の石を「吉浜の人々」と「歴史」に例えてデザインした「石のかたち」です。 |
髙橋正晴 彫刻家・玉川大学芸術学部教授 |
2014年3月25日吉浜にて津波記憶石の除幕式が行われた。大船渡市戸田市長をはじめ多くの来賓の方の出席があり壮大に行われました。
「震災から3年が経ちこの除幕式の時に印象深いと感じたのが紅白幕でした。震災1年目で建立した第1号基目の除幕式では幕はなかったと思います。その余裕も皆にはなかったし、まして紅白なんかはおかしいという気持ちがあったためです。幕の色1つとっても住民の方々の意識が今どのようになっているのかが見て取れます。1つ前に建立された綾里駅前にある津波記憶石の時も、この吉浜の時も紅白幕だった。印象深い光景です。除幕式後、吉浜の方々が昼食会を開いてくださり、僕は取り付けてあるQRコードの説明をさせていただきました。震災の状況やデータなどを石碑を見に来た方々がスマートフォンなどで読み取るためです。その後、吉浜中学校の生徒さんによる復興にかける思いの作文朗読、合唱で「花は咲く」を歌っていただきました。この歌は今でも毎年3月11日に震災を忘れないために歌われているそうです。参加した全優石のメンバーも僕も涙を流し聞いていたのを覚えています。2人の村長さんの高台移転によって被害が圧倒的に少なく奇跡の集落と呼ばれた吉浜はこの震災を語る上で非常に重要な地域と言えます。我々はこの津波記憶石が震災の事実、教訓を後世へ遺す手助けとなれば幸いです。」
吉浜津波記憶石QRコードサイト http://tsunami-ishi.jp/ofunato-yoshihama/
今、吉浜の津波記憶石は震災のことを忘れないための学びの場として活用されている。津波記憶石は建てて終わりではなくこれからが始まりとなる。
この津波記憶石が吉浜の地域、復興と共に歩んでくれればと願う。(終)